未来を見据えたAI活用法:経営戦略と思考の言語化
2025年4月20日 09:16
目次
- この記事で解決できること
- はじめに
- AI活用の限界と「問いの質」の重要性
- 経営現場における「思考の言語化」の実践
- 思考の構造化:経営者の新たな武器
- 思考の地図が導く未来
この記事で解決できること
- AI 活用が伸び悩む真因「質問が曖昧」という構造的課題を特定できる
- 経営者・役員が取るべき 5 ステップ
直感 → 言語化 → 構造化 → 高品質な問い → AI への入力 を実践形式で学べる - M&A/DX/新規事業で使える"思考の地図"フレームワークを入手できる
- 質問力ひとつで AI 参謀のアウトプットが激変する事例を理解できる
- 毎朝 30 分の思考整理ルーチンで会議の質を上げる方法がわかる
はじめに
先日、顧客の役員会議の場に出席したときのこと。「AIを活用した業務変革の進捗は?」という社長からの質問に、私はChatGPTの導入状況を説明しました。全社員へ導入し、業務効率化等を目指すというプロジェクトです。数値的な成果報告の後、ある取締役から指摘を受けました。
「パイロット導入された部署から、AIに何を聞くべきかわからない、という声が上がっている」と。。。
この声は、単なるAIツールの操作方法の問題ではなく、より本質的な課題、すなわち「AIに何を問うべきか=自社の課題や目的を明確に言語化できているか」という、私たち自身の思考プロセスと課題設定能力が問われていることを浮き彫りにしていると思います。
AIとの付き合いも3年目に。もしかしたらAIが意識を持って自己を確立するような時代がくれば別ですが、今の段階ではAIは人間の良き相棒になってくれる技術なのだと実感しています。
当初は漠然とした不安もありましたが、実際にAIを業務に取り入れる中で、それは人間の仕事を単純に奪うものではなく、むしろ高度な分析や創造的な作業を支援し、人間の能力を拡張する強力なパートナーとなり得ることが明らかになってきました。その結果、当初の「AIによる人員削減」という恐れは、「AIといかに協働するか」という前向きな戦略課題へと変化してきています。財務分析から市場予測、意思決定支援まで、AIを「経営参謀」として活用することが、現代の経営幹部には不可欠なスキルになりつつあるのではないでしょうか。
AI活用の限界と「問いの質」の重要性
ただ、AIは「思考の補助輪」になり得ても、「思考の代行者」にはなれません。あるM&A案件の検討時、「この買収は妥当か?」という漠然とした問いかけでは、AIは一般論しか返してきませんでした。しかし「対象企業の技術資産価値と我社の既存事業とのシナジー、5年間のキャッシュフロー予測を踏まえると...」と具体的に問うと、本質的な検討材料が得られました。この差は歴然でした。
AIとの対話は、自分の考えを外在化し、それを精緻化するためのツールであり、「問いの質」がそのまま「答えの質」になる世界。だからこそ、自分の考えや仮説をどれだけ言語化できるかが、AIを「使いこなす力」になると思います。
特に経営戦略や新規事業検討の場面でAIを活用しようとすると、「直感→言語→構造化→問いの形成→AIへの入力」というサイクルが回せないと、AIが表面的な答えしか返してくれませんから。
経営現場における「思考の言語化」の実践
また別の経営会議での出来事。各経営幹部自身から自身の業務におけるAI導入報告がありました。印象的だったのは、AIへの問いの立て方における具体性の差です。
ある役員は「次世代の主力事業をどう育てるべきか?」という抽象的な問いに留まり、得られた回答も一般的なものだったと報告でした。一方、別の役員は「当社の強みであるXと市場トレンドYを掛け合わせた場合、5年後の収益構造はどう変化し、必要な投資判断は?」といった、自社の状況を踏まえた具体的な問いを設定し、AIから実行可能な戦略オプションを引き出していました。この差は、経験年数というより、課題をどれだけ深く掘り下げ、言語化できているかの違いに起因すると考えられます。
たとえば「DXをどう進めればよいか?」という問いでも、「我々のコアコンピタンスは何か?」「データ活用による顧客体験の向上余地はどこにあるか?」「業界のデジタル成熟度と比較して我社の位置づけは?」というふうに、思考の地図を描ける経営者が、AI時代には圧倒的な優位性を持つと思います。
思考の構造化:経営者の新たな武器
思考の地図を描くということは、「イメージはある。でも言語にできない」という課題を乗り越えていくことです。ある成功している経営者は、毎朝30分間、経営課題を構造化して書き出す習慣を持っていると聞きます。このような思考を言語化し、構造化する習慣が、複雑な経営環境下での的確な判断に繋がっている可能性は高いと考えられます。
もちろん財務諸表を読み解く能力は経営の基礎だが、変化が激しく予測困難な現代においては、新たな事業機会を見出し、複雑な課題に対する戦略を自ら描き出す能力、すなわち思考を言語化・構造化する力が、従来の分析能力と少なくとも同等、あるいは状況によってはそれ以上に重要性を増していると言えるのではないでしょうか。
私自身、全社的なデジタルトランスフォーメーション戦略の立案などで行き詰まったとき、顧客先の経営会議でホワイトボードに現状と理想の姿を図式化し、そのギャップを具体的な課題として言語化し、説明しています。
その上で、構造化された課題に対する解決策の選択肢や潜在的リスクについてAIに問いかけると、多角的な視点からの示唆や関連データの整理・分析結果を得ることができています。これが触媒となり、2か月間停滞していた議論が急速に進展し、わずか1週間で具体的な方向性を定めることができた経験があります。
思考の地図が導く未来
また、思考の地図があれば、自社がどこに立っていて、どこへ行くべきなのかが見えてくる。そしてAIというのは、その地図を手にした「ナビゲーター」として最大の力を発揮してくれる。最終的に意思決定をするのは、いうまでもなく私たち自身です。私たちの思考力と言語化能力が、AIとの共創の質を決定づけます。
「表面的なトレンド分析によるDX戦略」と「本質を捉えた変革ビジョン」の差は、思考の言語化にあると思います。
経営とAIの境界線がますます曖昧になる時代だからこそ、私たち経営者は自らの思考をより深く、より明確に言葉にする必要がありそうです。